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魔法剣士の姫君(旧作)4
2011-08-21 Sun 02:22
 気配が複数増えた事に気付いたのは頂上付近まで来た頃の事だった。辺りには人気も無く、随分日が傾いており、山の中なので一層薄暗く感じる。

 そんな中イリアが唐突に口を開く。

「……1、2、3……全部で18。その内一人がずば抜けて強そうだが後は雑魚だな。その強い奴が頭目だろう」

「ん。それ以外は頭が悪そうな連中ばかりね」

「私だけでも充分かも」

 エクレアが言い終えると同時にこう言った時のお決まり文句が聞こえた。

「おい、ねーちゃん達。怪我したくなきゃ金寄越しな!!」

 だみ声の男が姿を現すと同時にイリア達の周りを男達が取り囲む。どの男達も屈強やら、人相が悪いなどいかにもな連中ばかりだ。

「……どうしてどこもかしこもこう言った連中は同じ様な容姿をしているんだろうなぁ………」

「そうね。区別が付かないわね」

「何処かで血が繋がっているんじゃないの?」

「一族揃って盗賊、山賊が家業か? だったらその情熱を真っ当な道に生かして欲しいものだな」

 だがイリア達は囲まれながらもポンポンと何時もと同じテンポで姿を現した山賊達に関しての感想をのんびりと述べている。

「おいこら! ねーちゃん達俺等を無視するったぁ良い度胸じゃねえかっ!!」

 その事は山賊達の感に障ったらしい。そこかしこから少し殺気立ったモノを感じる。だが、相手は何の力もないだろう三人の娘のみ。それが更に山賊達に優位があると思ってか、中には余裕でニヤニヤと下品な笑みを浮かべている者もいる。

 しかし、そんな者イリア達には通用しない。

「おい! 聞いてんのかっ?! 怪我したくなけりゃあ金品置いて置けば命だけは助けてやる」

「それ以外は保証出来ねぇけどな!」

 一斉に男達が笑う。その様にイリアはため息を吐く。

「…で、どうする?」

 イリアはリンディとエクレアの二人に問う。

「あんたは手出さなくて良いわ」

「そうそう。イリアちゃんは見てて」

 そう言ってスッとイリアの前にリンディとエクレアは出る。

「あ? なんだねーちゃん達。俺等とやろうってーのか?」

「無理無理。さ、大人しく金目の物だし……」

 男が台詞を言い終わらない内にリンディとエクレアの二人は動き出した。男達の目の前一瞬姿を消した様に見えた次の瞬間。

 二人の姿は男達の背後にあった。

「? なんだぁ……っ?!!」

「ぎゃぁあああああっ!!」

 はらり…と一瞬の内に何人かの着ていた服が切り裂かれ、その場に細切れになって落ちる。その姿は情けない。世間一般で言う下着一丁の姿だ。

「どうした? 今さっきまでの勢いは」

 その事態に服を切り裂かれなかった他の連中はたじろぐ。先程まで無かった警戒心が露わになる。

「お前ら……っ!」

 山賊の一人がギリリっと歯を噛み締める。

 その様子を見てイリアは目を細める。

(…先程感じた強い気配がいない………?)

 気が付いた瞬間

「情けねぇなおめーら」

 その言葉と同時にイリアに向かって鋭い刃が降りかかる。

「! イリア!!」

「イリアちゃん!!!」

 リンディとエクレアの少々焦った声が響く。が、イリアは体の重心を少しズラしただけでその攻撃を避ける。避けきると先程と同じ格好でその場に立つ。その姿に二人はホッと安堵のため息を吐く。が、二人は先程より気を引き締める。こんな風に自分達に気配を感じさせず、あまつさえイリアに攻撃を仕掛ける事が出来る程の力量を持った男がいるのだ。

「へぇ……。これを避けるかい」

「お頭~~~!」

 イリアに襲い掛かった男は何処か楽しげに呟く。そこに情けない山賊の声が響く。お頭。その言葉で目の前の男が主格だと分かる。いや、気配からしてそうとしか思えない。

 じっと目の前の男を見やる。

 男は周りにいる他の山賊と一線を越した存在に見る。まずその容姿。左目を眼帯で覆っているものの整った貌が暗くなった中でも伺える。それに燃えるように紅い髪が凄く印象的だ。程良く鍛えられたであろう体躯から一見して優男風にも見えるがその気配はただ物ではない。

 これが先程感じた強い気配の持ち主の様だ。

 確かにこの男が屈強な男達を纏め上げている。それが良く分かった。

 その赤毛の男はイリアを楽しそうに笑みを浮かべている。その笑みは新しい玩具を見付けた子供の様だ。

「てめーら。情けねーぞ。ったく。まあ、こんな面白そうなイイ女滅多にいないだろーがな」

 その言葉にイリアの片眉が上がる。だが、それでも無言で男の言動を見守っていた。男はもう一度イリアを見やる。二人の視線が交わる。

「こいつらじゃかなわねー筈だよな。そんな面白い気配させているんだから」

「……………面白い?」

 そこで漸くイリアは口を開く。

「ああ。あとそっちの女二人もな。だが、一番はあんただ。そんな気配今まで感じた事もねーな」

 その言葉でイリアは確信する。

 この男はイリアの力に気が付いたのだ。己の身に隠した力を。確かに目の前の男の実力ならばそれも当然かも知れない。知らずイリアの口元にも笑みが浮かんでいた。

「ほう…。これに気が付くか。大した男だな」

「お、良いね。その表情。久しぶりにぞくぞくする」

 この男相手には手加減だけでは済まなそうな雰囲気を感じ取った。イリアは暫し考え込む。

「ふむ。しかしながらお前の相手をするのは些か面倒そうだな」

「そんな事言うなって。俺の相手してくれよ」

 だが、イリアは動こうとしない。それに男は更に笑みを浮かべる。

「だったら、あんたが動かざる終えない様にすりゃあイイか…なっ!」

 それと同時に男は一気にイリアとの間合いを詰める。そしてイリアに向けて再び剣を振るった。イリアも応戦しようとしたが、そこに第三者の姿が目の端に飛び込み寸でで止める。

 赤毛の男の刃は新たに姿を現した男の剣によって受け止められた。

「そこまでだ。手配犯、ジルザール・ジルベック」







 
’09・08・11


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