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魔法剣士の姫君(旧作)21
2011-08-23 Tue 01:06
 クノーラの部下達に丁重に城まで送られ無事に部屋へと戻ると、各々が湯浴みを終えると早々に眠りに就く事となった。

 そこまで疲れてはいないが、この先何があるか分からない。城内で安全と言える場所で休めるうちに休んで置く為だ。

 早々に部屋に戻ったイリアはベッドには入らず、窓からバルコニーへと出る。そこから離宮の裏庭にも出られる様式になっていた。

 空を見上げると雲ひとつ無い満天の空。

 そして、夕刻の出来事を思い返す。

 まさかもう一度あのジルザール・ジルベックと出会うとは思わなかった。

 峠で逃げられた時もそうだったが、今回もまた手合わせをしてみたいと言われた。

(あの男…相当厄介だな。私の身の内に持っているアレの気配まで感じ取っているとは…)

 ここ数年は訓練に間…リンディとエクレアとの稽古の間に…しかも結界を張った中出でしか出さなかったシュッセル国の家宝とも言うべき物。この身に宿す事で気配すらも相手に悟らせる事が無いと言っても良かった。

 しかし、あの男はそれを嗅ぎ取ったのだ。

 それはあの戦闘に対する執念から呼び起こす物だろうか。だが、イリアにはそれだけでは無い様に思えた。

(ジルザールも古に関係のある者なのか…?)

 そうならば少々厄介だ。

(兎に角、あの調子ならばまた姿を現す事になるだろう。面倒だが仕方が無いな…)

 ため息を吐き出すと、意識の隅に何かの気配を察する。

 考え事を止め、その気配のする方に向かう。殺気は無い。

「……誰だ?」

 イリアが呟くと庭の奥の方から軍服に身を包んだ黒い影が現れた。それは見覚えのある人物だった。

「デュオ殿」

 先程も出会ったこの国の騎士であろう男、デュオニュース。

「イリア姫。まだ起きていたのか」

 相手も微かに驚いた様に目を見開いている。

「貴方こそ…。ああ、もしかして見回りですか?」

「そうだ。一応夜の警護担当だったのでな」

 言いながらデュオは近付いて来る。

「それはご苦労様です」

「ま、それが俺達の仕事だからな」

「今は世界各国の姫君達がいるから仕事は大変なのでしょうね」

 デュオは苦笑しながらイリアの問いに答えた。

「確かに仕事は増えたな」

「早く皇帝陛下が后を選ばれると良いですね」

 イリアの言葉にデュオは面白げに瞳を細める。

「何だ。その口振りだと自分は選ばれないと思っている風だな」

「選ばれるだけの理由がありません。それに后の座に対して興味もありませんし」

「それに付随する長命も?」

「勿論。この国の摂政殿にもお伝えしましたが。各国の様にそこまで興味は無いのです。確かに寿命が長くなる事は国民の為に何かが出来る時間が増える。その辺は良い事だとは思いますが、私の感想としてはそれ位のものです」

「それでは権力等にも興味がないと言う事か? シュッセルも中々の国だが、帝国の后になると言う事はそれだけでも更に世界の頂点に立つ一族の仲間入りだ」

 その言葉にイリアが肩を竦める。

「権力なんて物は鬱陶しく思います。必要以上にある身分は己の身を縛り、身動きすら出来なくなる事もあります。まあ、国民に何かをする為には権力も必要でしょう。そう言った意味では地位が必要ですね」

「全てに置いて考えが国民主体なのだな」

「そうですね。これは最早我が国の王族の血と言っても過言ではないですよ。代々国民の為に身を費やすのが何よりの喜びなんです。私はその血を最も色濃く受け継いだ様で」

 上二人には母上の血筋が色濃く出ている様ですがと答えるとデュオの笑いを誘った。

「イリア姫の様な施政者ならばその国の者達は幸せ者だ。最近の王族やそれに縋る奴等は国民の事など考えていない様だからな。いかに己の利益になるか…そればかりしか頭に無い」

「ええ、悲しい事です。本来政治と言う物は国民の為にあるべき物。それを忘れて己の利益になる事ばかり考えている政治では国は立ち行かなくなる」

「そこまで考えられるのは凄い事だ………所で話は変わるが、何かに狙われる様な記憶はあるか?」

 話がいきなりすり替わったが、イリアはその言葉に臆した様子も無く、平然と答える。

「此処に来れば色々あるでしょうね。なんと言っても今は皇帝陛下の后選定の時期。各国が凌ぎを削っている真っ最中。今朝、外出許可をラドルフ殿に直接貰いに執務室へ訪れました。その時に勘違いされた様です」

 そう言ってイリアは辺りを見回す。そこかしこから息を潜め、出来るだけ気配を隠し様子を伺っているのを感じ取った。

「成る程…。皇帝陛下は未だにどの国の姫の召還もせず前にすら現れないからな」

「ええ。いらぬ嫉妬を買った様です」

「…皇帝の城で良くやる。バレたらただでは済まないだろうに」

「それだけ必死と言う事ですよ」

「…全部で十五人か…。少し警備体制を見直さなくては駄目だな…」

「それもあるかも知れませんが、どこかの国の内部の者が手引きすればこんな事も簡単ですよ」

 言い切ると、デュオが長剣を構える。

「その辺もやはり強化すべきだな。出て来い。いるのは分かっている」

 鋭い口調でそう言うと庭のそこかしこからイリアとデュオの二人を取り囲む様にして全身黒の服に身を包んだ者達が姿を現す。暗殺者…一目で分かる装いだった。







 
’10・02・25


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