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魔法剣士の姫君(旧作)17
2011-08-23 Tue 01:03
 ラドルフが言った通り、午後一番に部屋にノック音が響き渡る。

「お迎えに上がりました。イリア姫殿」

 同時に聞こえた声に三人は顔を見合わせる。その声には聞き覚えがあった。

 リンディが部屋の扉を開けるとそこには…

「クノーラ殿」

「ラドルフ摂政の申し出によりお迎えに上がりました。行き先は城下街でしたよね?」

「はい。お手数ですが、宜しくお願い致します」

「では、早速参りましょう」

 クノーラに連れられて三人は重苦しい雰囲気漂う後宮から漸く外に出られた。







 イリア達三人の馬を引き連れて城下街入り口まで来ると、人の目の無くなり、漸く一息付ける様になった。それと同時にクノーラの態度も畏まった物から、最初に出会った頃に戻っていた。

「いや~、やっぱり堅苦しいのは嫌だな~」

 庶民に混じっても何ら違和感の無い服装でクノーラは爽やかに言ってのける。

「私達の我侭の為に申し訳ありません」

「良いって。それにしても言葉遣いとかこんなんだけど構わないよな? どうも最初に会った時の癖が抜けなくてな」

「構いません。寧ろその方が気楽で良いですよ」

「そう言って貰えると助かる。…しかし立派な馬だな。姫さん達の馬は」

 言いながら関心した様にイリア達の馬を見る。

「この子達が子馬の頃から世話をして来ました。我が国の軍馬になります。帝国の馬ともまた種が違いますが」

「自分達で世話して来たのか。そりゃすげえ。姫さん達の国は良い所だな」

「何も無い国ですが、農業やらは盛んですので。それに我が国では移動手段や、牛の代わりに農業の手伝いをさせたりするのが主ですので、戦場を経験する事は殆ど無いです。だから軍馬と言っても大した事は無いですが」

「いやいや、平和なのが一番だぜ。触っても平気か?」

「ええ…」

 イリアが頷くとクノーラはイリアの愛馬フラムに触る。均整の取れた筋肉の質の良い肌触り。間違い無く名馬の類だとしきりに関心してフラムを撫でていた。

 だが、突如クノーラの頭がカプリと何かに噛まれた。

「あ…」

「うおおおっ?! 何んだいきなり?!」

「ショ、ショコラちゃん! 駄目だよ~!!」

 クノーラの頭を噛んだのはエクレアの愛馬だった。

 ショコラはエクレアに窘められて漸くクノーラを噛むのを止める。

「ご、ごめんなさい!! クノーラさん!!」

 エクレアがしきりにクノーラに謝る。

「いや、驚いただけだから気にしなくていいぜ。しっかし…賢いな。姫さんの馬を守る馬か。もしかして…お嬢ちゃんの馬は雄か?」

「いいえ~。イリア姫様の馬も私の馬もリンディの馬も雌です~」

「そりゃあ更にすげぇや!!」

 クノーラはショコラに噛まれた事もさほど気にした様子は見せず、更には豪快に笑って楽しそうにイリア達の馬を見やった。

「これからも姫さん達を守ってやれよな」

 そう言うクノーラの言葉に馬達は当然とばかりに揃って啼いた。

 その様子がまた揃って可笑しかったのかクノーラはもう一度笑ったのだった。







 ちょっとした出来事はあった物の、それ以降はクノーラの案内の元、イリア達は帝国の城下をゆっくり見て周る事が出来た。

 クノーラは近衛師団総大将と地位にあるだけあって、街を知り尽くしていた。何処が国の名所で、何が売っているのか。

 店の場所、売り物…それら殆どを覚えていたのだ。

 更に驚いた事に民はそんなクノーラの地位を知っていても、気軽に声を掛けている。

「よ、クノーラ! 珍しいな、可愛い女の子連れで!」

「デートかい?」

 等とイリア達が帝都に初めて入った時と同様に声を掛けられては気軽に返していた。

「凄いですね。人々も貴方の事を知っていてもこの様に気軽に声を掛けてくれるなんて」

 自国ではイリアも身分に関わらず声を気軽に掛けて貰うが、帝国との規模も気質も違うのにこうも気軽に声を掛けられているクノーラの様子に驚いた。

「俺が堅苦しいの嫌いだしなぁ~。こうして気楽に声を掛けてもらった方が何かと相談にも乗りやすいし、情報も早く入って来るもんだ」

「成る程」

 他愛ない話をしながら街中を馬と共にイリア達はゆっくりと歩いて行く。

 やはり最初に訪れた頃と同じ…いや、それ以上に活気に満ち溢れている空気をイリア達は心置きなく満喫した。後宮内の不吉な空気よりやはりこう言った空気の方が心地よい。

 イリアはそう思いながら今の後宮内の争いに早く決着が付かないものかと内心思いながらため息を一つ零した。

 こうしてクノーラの案内の元、城下の観光名所を巡りに巡って気が付けば既に夕暮れの自国になっていた。

「ありゃ、もうこんな時間か。んじゃあ今日はどっかで飯でも食って城に帰りますか」

 その提案にイリア達は即座に頷く。

「よしっ! んじゃあここら辺で一番美味い食堂に案内するぜ」

 夕暮れになりますます人込みが増した中を器用に移動しながらクノーラの薦めである食堂へと向かった。







 
’10・02・18


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