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魔法剣士の姫君(旧作)プロローグ
2011-08-21 Sun 02:10
 闇が広がっていた。

 夜の闇よりも尚深く、濃い闇。

 その中に男はいる。

 男は闇の中を彷徨っていた。ただ気紛れに。気の赴くまま。



 そして見付けた。



 それは男がずっと探し求めていたもの。気が遠くなる程の長い年月をずっと。

 男はにやりと笑みを浮かべた。

 闇夜に浮かんだ血のように紅い瞳がそれを見つめる。

「ついに見付けた…」

 呟いた次の瞬間、男の姿は闇から消え去っていた。







 世界に類を見ない程に緑豊かで、資源豊富。四季と言う季節が存在し海に囲まれた島国…シュッセル。独特の文化や生活を持つこの国の姫の朝は早い。

 いや、この国の第三姫と言った方が良いだろうか。

 普通の姫君はまだまだ己の美を保つ為だ何だと言ってようは寝不足はお肌の大敵と言って惰眠を貪っている時間だが、この国の第三姫であるイリアだけは違った。

 ドレスでは無く仕立ては良い物だと見れば分かる質素な男物の服に袖を通し、手早くこの国の王家の中でも希にしか生まれぬ象徴である水色の髪を一つに纏めるとそのまま寝室を出る。

 その先では既に二人の侍女が待ち構えていた。

「おはよう」

「おはようございます」

 二人の侍女から挨拶を受け、片方の侍女が持って来ていた水桶に手を浸すと、顔を洗い歯を磨き、もう片方の侍女が持っていた布を受け取ると顔を拭きながら黙っている二人にイリアは声を掛ける。

「今日は朝一で決済しなきゃならない書類がある。悪いけど朝食は執務室の方に食べやすい物を持って来てくれ」

「畏まりました」

 イリアの言葉に侍女は頷くとその場から下がる。それを見やり、イリアは壁に立て掛けてあった護身用と銘打った武器を腰に下げると自分も部屋を後にし、この国の政治を一手に引き受ける執務室へと足を運んだ。







 シュッセルは弱小国で小さな島国。しかし国内は大国に勝るとも劣らない賑わいを見せている。緑豊かで、水も豊富、資源にも恵まれてこれ以上無いと言う程好条件にある土地。他国では類を見ない四季が存在し、季節事に国の景色は姿を変える。正に楽園の様な国。

 この様に豊富な地は他国にして見ればかなりの好物件。略奪してしまおうと言う国も絶えないとも思われる。実際過去に何度かその憂き目に遭った歴史がある。だが、この国は周囲を海に囲まれており城は断崖絶壁の頂上建てられている為難攻不落の国とも呼ばれた。

 それも功を奏したのだろう。だが、何よりもこの国を治める国王とその側近達は勿論の事、国民に至るまで平和主義と言う資質を持っていた。戦争を回避する為に努力を惜しまぬ国。その国柄が戦争と言う名の戦を過去に幾度もなく回避していた。

 それ故にこの国は他国とは違い、かなり長い間戦争も飢えも知らずのんびりとした平和な国となっている。

 それに付け加えてこの国は数多くの国と同盟関係にあった。

 おかげで弱小国ながらもこの国の王族に対して関係を結びたいと思う各国から日々縁談等が迷い込んでくる。

 この国には姫ばかり三人もいるからだ。

 更には噂が世界中に出回っていた。



 曰く



 この国の第一姫と第二姫は世の男を虜にする美貌を誇る絶世の美女だと。

 それ故に縁談話がひっきりなしなのだ。第一姫と第二姫には。

 此処まで来て、おかしいと感じたかも知れない。姫は三人いるのだから更にその下にもいる。第三姫だ。なのに何故第三姫は噂に上らないのか。

 第一姫と第二姫と違い、第三姫は極々普通の容姿をした姫だったからだ。



 これはそんな第三姫が主役の物語。







 
’09・08・09


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